top of page

公益財団法人JKA  地域社会の共生に資する研究事業
​「
被災地域におけるボランティアの関与とレジリエンスに関する研究」外部評価

​外部評価結果

◆評価コメント   

 本事業は震災被災地での支援活動に関わった人々に対して、自己や地域への気づきを誘発する振り返り活動を行うために、「リフレクションカード」を開発しその実用可能性を検討するものである。

 開発された24種類のカードは大きくa「自分の考えを見つめる」、b「地域との関係性を考える」、c「未来を考える」の3つに分類できるものである。それぞれおもて面には質問が書いてあり、裏面にはその質問をするねらいが解説されている。持ち運びもしやすいサイズになっている。質問は災害支援の現場のみならず、多様な地域活動の場面でも応用的に活用できることが伺われた。

 3種類の中には似たような質問もあるが、それは異なる角度で何度も似たようなことを質問することで理解が深まるという意義があるので、優れた設計であると考える。可能ならば今後整備されるウェブサイト(後述)などで、その質問がなされるべき順番(より焦点化・個別化されるような)が示されると、活用場面で役立つと思われた。

 災害(やその他の)支援活動の経験は個別的・断片的であり、それが必ずしも地域の現状や課題を示さない場合もある。しかしこのカードを使うことによって、活動者が集団で多面的にその課題や現状を検討することにつながることが期待できる。

 また個人の経験はマクロな政策課題に結び付けにくいこともある。今回の24枚のカードには直接的にそうした政治的問題を理解する質問はないが、現在のカードを応用したり、あるいは質問を改善することによって、そうしたマクロ的な文脈への理解を促すことも期待したい。

 今後、ウェブサイトに活用方法等の解説を掲載する予定とされており、今後さらにこのカードを活用した振り返りが広がることが期待される。またコロナ禍でもオンライン・ワークショップなどで活用が期待される。
                                     立命館大学政策科学部教授 桜井政成先生

      ​              

◆評価コメント

  本研究は、従来の被災地域におけるボランティア論が、支援する側からの視点に軸足があることが多かったのに対し、被災地の支援受け入れをした当事者の視点から理論構築を試みるという新たなチャレンジとして位置づけられる。支援ボランティア受け入れ側への丁寧な聞き取りを通して、東日本大震災から10年余りの時間経過がある今だからこそ語られるさまざまなストーリーを引き出し、「支援」ボランティアが被災地域に関わることで生起する被災地との相互作用の実態を明らかにしようという試みは非常に意味がある。ボランティアと被災地域の人々の間の関係性が問い直され、「支援」そのもののあり方へも貢献する研究である。

 研究成果のアウトプットの形としてリフレクションカードという教材・ツールの形式をとっていることも特筆すべき点である。まず24枚のカードの内容は、被災地の自治体職員、避難所運営や復興に関わった(ている)方々からの聞き取りによる「受け入れ側の視点」を、1)(支援ボランティアの)自分自身の考えを見つめる、2)地域との関係性を考える、3)未来を考えるという3つの視点から整理している。災害時には、支援に対して熟考する時間はなく、あとから考えがついてくる。地域との関係性のカードでは、災害現場を想起させる具体的な問いが含まれており、このカードの真骨頂ともいえる。そして支援ボランティアが自らの地域への関わりを見直すことを促す3番目のカードとなる。

 今後も災害が頻繁に起こるであろうことを考えると、支援に関心のある人だけでなく、誰もがこういった問いを日常から考えることはとても意味がある。24枚のカードは、経験の差や関心の差などがあっても、共に考える場を共有できるよう、多様な問いが準備されており、被災地関係者間でも使用できるし、学校や社会教育などの学びや研修でも一般的なテーマとして使用することができる。成果の共有方法として、カードの普及とともに実践事例の収集を行い、カード教材としての有効性の検証も可能であろう。  

 カード教材という手法は、コミュニケーションツールとしてもすぐれたものであるので、支援ボランティア一人ひとりのふりかえるを深めるとともに、被災地の復興過程で刻々と変化する状況や人々の心、そしてこれからどのような地域づくりをしていくべきか、ということを話し合う様々な場面での活用が期待される。

      ​           認定NPO法人開発教育協会顧問 上條直美先生

Our Clients

bottom of page